売れない・貸せない・利益が出ない 負動産スパイラル
姫野 秀喜 (著)
2022年8月9日更新
不動産投資はサラリーマンの副業として推奨される資産運用であり、ブームと言えるほど不動産投資が広がった時期に投資用物件を購入したサラリーマンの人も少なくありません。
不動産投資を含む資産運用において、税金に関する不安を感じる人も多いのではないでしょうか。不動産投資を始めると確定申告をする必要があり、申告漏れや申告内容などに不備があると、税務署からの調査指摘が入ることもあります。
これらの不安は正しい知識を身につけることで除去可能です。この記事では、30年以上の税理士経験を持つ著者が解説する、不動産投資にまつわる税務の注意点や税務調査の実態を紹介します。
不動産投資によって収入を得ている場合は、本業がサラリーマンであっても確定申告をする必要があります。確定申告には白色申告と青色申告の2種類があり、税務署に開業届を提出することで青色申告の適用に伴う控除を受けることが可能です。
しかし、青色申告の適用を受け続けるためには申告期限の遵守が必要になります。著者の経験から、2期続けて確定申告書を提出していないまたは遅れて提出すると、青色申告の適用を取り消されるケースが多いものです。
金融機関から融資を受けるためには、審査の必要書類として過去の確定申告書を提出するよう求められることが少なくありません。この際、青色申告が適用されていると金融機関からの評価も高まる傾向にあります。
開業届の提出と青色申告の維持は金融機関対策としても有効であり、1度開業届を提出した後は申告期限を遵守することが重要です。
不動産投資をしていると、場合によっては税務署及び県税事務所から「〇〇のお尋ね」という文書が送られてくることがあります。いわゆる「お尋ね文書」には複数の種類があり、各文書の目的は以下の通りです。
文書のタイトル | 目的 |
不動産の購入に関するお尋ね |
不動産購入資金の出所源泉を捉え、贈与・相続・譲渡税などの税金漏れを補足する |
不動産の購入に関するお尋ね |
不動産の取得時に発生する不動産取得税の税金漏れを補足する |
滞納者に対する家賃についてのお尋ね | 運用している物件に入居中の税金滞納者が物件オーナーに預けている保証金等の差し押さえ |
お尋ね文書が送られてくると、申告漏れがあったのではないかと不安になりがちです。しかし、お尋ね文書に対する回答義務は法律で定められておらず、強制力はありません。
税務署または都道府県税に関する部署は、主に「税金を支払ってもらう目的」を持ってお尋ね文書を送っています。法律上の回答義務がないからと放置してよいわけではないのですが、知識や理解が不足している状態で回答するとやぶへびになる可能性も否定できません。文書を受け取ったらまずは税理士などの専門家に相談するのが安全です。
一方で、法人を設立して不動産を運用している場合は、毎年1月末までに「法定調書」という書類を税務署に提出しなくてはなりません。法定調書は法律で提出を義務付けられているため提出漏れがあると調査対象となり、税務署員が来ることもあります。
税務署員が来ると半日程度かけて様々な確認入り、質問に対して返答できないようなものがある場合は税務調査に移行することもあり得るので要注意です。
投資用不動産であるか否かに関わらず、不動産を相続する場合は親子間で不動産の売買を行い、料金は支払わないということがあります。登記上の所有者のみ変更し、実際には金銭のやり取りをしないということです。この場合は、子どもに「資産の購入金額に関するお尋ね文書」が送られてくることがあります。
このようなケースでは、まず税務署に対して「実際にはお金を支払うので贈与ではない」旨を回答することが必要です。お金のやり取りがないと、贈与とみなされて贈与税が課税されます。
また、贈与ではなく売買であることを主張するために、売買契約書を作成して収入印紙を貼付することが必要です。売買金額は不動産の市場相場を調査するとともに、親に譲渡税が発生しないよう不動産の取得価額を確認して設定します。
なお、売買契約書に取得費用は分割で支払う旨を記載しておけば、1度に多額の費用をやり取りする必要はありません。
このように、相続に関係する不動産の親子間売買を行う場合でも、売買契約書を作成することは重要です。
毎年7月10日は税務署の異動日であり、税務署の職員は役職によって1年~5年のスパンで異動を繰り返しています。新しく赴任してきた税務署員が最初に着手するのは税務調査です。税務調査の傾向と対策は以下のような内容になります。
なお、正式に税務調査が入る場合は以下の内容を確認することが重要です。これらは納税者の権利であると言えます。
一部のサラリーマンは1,000万円を超える金額の収入を得ており、税負担を重く感じているものです。このような人の節税対策として著者が勧めるのは不動産投資です。著者は個人と法人合わせて50棟以上の物件を運用しており、約80億円の資産を所有しています。
税理士業を営む傍らで大規模な不動産投資をしている著者が節税対策として不動産投資を提案しているのであれば、説得力があると言えるでしょう。
築古の木造アパートを運用することで実際の支出を伴わない減価償却費を計上し、本業の節税につなげることが可能です。著者は税理士業の顧客に節税対策として投資用物件を紹介していますが、実際の物件購入に踏み切る人は少数であると言います。著者が分析する「物件購入に踏み切れない理由」は以下のようなものです。
例え築30年の物件であってもリフォームを怠らなければ、あと20年は運用できると著者は自身の経験から語っています。修繕費に関しても、入居者が入れ替わる際の原状回復工事などを除けば、定期的な郵便受けの交換・階段や玄関ドアの修理、外壁塗装などを含めて50万円程度で済むとのことです。
なお、「実際の支出を伴わない減価償却費」というと脱税行為なのではと不安を感じる人もいるかもしれません。しかし、これは数十年に渡って税理士業を営む著者も勧める節税方法であり、減価償却費の計上は合法的なものです。
まとめ
サラリーマンなど多くの人にとっては、実際に自分で事業を営んでいる人でなければ確定申告を経験することはありません。税務関連の経験を持たない人が税務署からの問い合わせなどに必要以上の不安を感じることは多いものです。
しかし、正しい知識を身につけて期限内の申告などをしていれば不安を感じる必要はなく、不動産投資によって資産を拡大していくことも可能です。もし税務に関する不安を感じることがあれば、納得いくまで税理士に相談すれば問題ありません。
鳥山 昌則 (著)
2016年11月2日発行
人物
氏名
小川 進一
保有資格
・(公認)不動産コンサルティングマスター
・相続対策専門士
・不動産エバリュエーション専門士
・宅地建物取引士
・賃貸不動産経営管理士
・定期借地借家プランナー
プロフィール
不動産一筋35年!成約件数述べ5,000件以上。
自身も都内に複数所有している実践大家。