売れない・貸せない・利益が出ない 負動産スパイラル
姫野 秀喜 (著)
2022年6月24日更新
不動産投資というと、とても大きな元手が必要と思っている人は多いのではないでしょうか。しかし、100万円や200万円で売られている物件を購入し、家賃収入の獲得までこぎつけている人もいるのは事実です。
ただし、安価で売られている物件にはリスクも多く、知識がない状態で手を出すと失敗してしまうこともあります。この記事では、長野県にある100万円の物件から不動産投資をスタートした著者の経験談をご紹介します。
著者は長野の高校を卒業後、東京の専門学校に通ってから池袋で働いていました。しかし、当時の給料は10万円にも満たず、その暮らしぶりは大変苦しいものです。何とかお金を稼ぎたいと考えた著者は、東京から田舎へ帰って自分のお店を出そうと決心します。
地元に帰ってから4年かけて自分の店をオープンしたものの、順調だったのは最初だけ。お店をオープンしてから3ヶ月が経つ頃には完全に客足が途絶えてしまいました。
結局出したお店を畳んだ著者は、株式投資を始めます。時を同じくして結婚したため、ご祝儀の25万円を元手としてボロ株を中心に取引した結果、すぐに140万円まで増やすことに成功しました。
しかし、株式投資が軌道に乗り始めて3~4ヶ月程度経ったところで、ライブドアショックが起こります。損切りを渋った結果、最初の元手すら失う結果に。株式投資をあきらめた著者は次にFXを始めます。
ところが、FXも地元の先輩が儲けている一方で、著者は一向に儲けが出ません。ここで、著者は投資家の加藤ひろゆき氏の本を読みます。加藤ひろゆき氏は激安アパートの投資で成功を収めた投資家です。
著者は加藤ひろゆき氏の本に書いてあった「100万円以下の資金でも物件を買える」ということに衝撃を覚えます。それから著者は片っ端から不動産ブログを読み漁ります。ここでまずは「車を1台買うつもりで不動産を1つ買う」ことを決意したのです。
不動産投資を始めると決意して以降、著者は100万円以下の物件探しに奔走します。最初は「アットホーム」という不動産サイトで物件を探しましたが、100万円を下回るような物件はなかなか見つかりません。
毎日同じウェブサイトを見ていても同じ物件しか出てこないと感じた著者は、競売物件サイトの「BIT」もチェックするようになります。
競売物件で良さそうな物件を見つけたものの、自殺物件やまだ人が住んでいる物件などを目の当たりにして、著者は入札を諦めました。自殺物件に入居者が入るとは思えなかったうえに、まだ住んでいる人を追い出すことなどできないと思ったのです。
競売物件を諦めた著者は、引き続き不動産売買のウェブサイトで激安物件を探します。そして、投資用物件を購入しようと思い立ってから半年が経った頃、とうとう良い物件が見つかりました。
どちらも築古ですがとにかく駅から近く、200万円・110万円と非常に安いマンションです。どちらの物件も現地で見たところ、200万円の物件は天井がとても低く、圧迫感が強いところが気になりました。不動産屋に相場家賃を聞くと3万円で、表面利回りは18%になります。
一方で、110万円の物件は広く感じる上に造りもしっかりしていて、建物そのものは悪くない印象です。しかし、壁や台所などがとても汚く、そのままでは間違いなく貸し出せません。
明らかにリフォームは必要ですが、相場家賃は200万円の物件と同じく3万円です。表面利回りは36%で、200万円の物件よりも明らかに良いと感じられます。著者は110万円の物件を購入しようと決意しました。
しかし、売買契約に当たって不動産会社から受けた重要事項説明の内容が、著者には外国語をしゃべっていると思えるくらい理解できません。強い不安を感じた著者は、「印鑑を忘れた」と言って1度逃げ帰ってしまいます。
不動産用語の意味を猛勉強した著者は、それから1週間経った後にやっと売買契約を完了させたのでした。
何とかして物件の売買契約を済ませた著者は、まず部屋のリフォームに取り掛かります。並行して入居者探しに着手し、不動産会社に仲介手数料を払いたくないと考えた著者は、いろいろな知り合いに「部屋を借りたい人がいたら紹介してほしい」と声を掛けました。
最初に著者がリフォーム費用を見積もった結果、おおよその金額は35万円でした。知り合いから紹介されたリフォーム業者へ見積もりを頼んだところ、37万円との回答が。
リフォームに37万円かけるのは難しいと感じた著者は、値下げ交渉のために見積書の提出を依頼しました。ところが、リフォーム業者はいつまで経っても見積書を出してこないどころか、リフォーム実績も提示してきません。
一方で、入居者の方は「ある人がその部屋を借りて又貸ししたいと言っている。希望家賃は47,000円だ。」という連絡が知人から著者に入りました。家賃さえ入ってくるなら又貸しでも何でも構わないと考えた著者は、その希望者に部屋を貸すことにします。
リフォームについて、別の業者に発注しようと断りの連絡を入れたところ、その又貸し希望者と名乗る人が著者のところを訪ねてきました。又貸し希望者は断った業者は自分の知り合いなので、その業者でリフォームをしてほしいと言います。
さらに、物件引渡し日と同時に人が入れるようにしろと怒鳴りつけてきたのでした。つまり、又貸し希望者はリフォーム業者とグルだったのです。その後もトラブルが続いたため、結局その入居希望者は断って再度入居者探しをすることになりました。
著者は改めて入居者探しを始めたものの、2度目の入居者探しは非常に難航します。何とかリフォームが完了したため、著者は部屋に家具家電をつけようと考えました。古臭く見える照明をシーリングライトに交換し、女性ウケの良さそうなテーブルと時計を入れたのです。
しかし、買ってきた家具家電を部屋に置いて写真を自身のブログに載せたところ、とても冷たい反応が返ってきました。最たるものは「テーブルは邪魔」というものです。
一方、知り合いを頼った入居者探しに懲りていた著者は、仲介の不動産屋に入居者募集を依頼していました。何とかして入居者が見つかったものの、「テーブルはどかしてほしい」という要望が。
さらにエアコンがついていなかったため、入居者からの要望を受けてエアコンを取り付けることになりました。結局のところ、部屋の見栄えを良くしようと目論んで購入した家具家電はほとんど意味をなさず、別途エアコンの料金と取り付け料金を支払うことになったのです。
物件の購入から入居者決定までには様々なことがあったものの、入居者が入ってしまうとやることはほとんどないと著者は感じています。家賃収入から管理費・修繕積立金など各種経費を差し引いた後のキャッシュフローは毎月3万1,000円。
金額としてさほど大きなものではありませんが、全額キャッシュで決裁したおかげでローン返済のプレッシャーがなく、入居者が入ってからの安心感は大きかったと回顧しています。
とにかく最初の物件を買ってみた著者の主な教訓は以下の通りです。
数々のトラブルにあった原因は、投資家ブログなどは読んでいたものの、著者には経験と知識がとにかく足りなかったことだと考えられます。
まとめ
著者は最初の物件を購入してから1年後にローンを利用してRC造の一棟ものマンションを購入しました。こちらもローン審査や空室のリフォームに加え、入居者探しに著者は東奔西走することとなります。リフォームに関するトラブルは特に大きなもので、本書には著者がとても苦労している様子も描かれています。
不動産投資は失敗事例から学べることが多いと言われますが、本書には激安物件から投資をスタートした著者の苦労する様子がつぶさに描かれているため、まだ投資をしたことがない方などは特に、参考にしていただけたら幸いです。
【関連リンク】その他の本はこちらからご確認ください。
まりお (著)
2010年11月27日発行
人物
氏名
小川 進一
保有資格
・(公認)不動産コンサルティングマスター
・相続対策専門士
・不動産エバリュエーション専門士
・宅地建物取引士
・賃貸不動産経営管理士
・定期借地借家プランナー
プロフィール
不動産一筋35年!成約件数述べ5,000件以上。
自身も都内に複数所有している実践大家。