売れない・貸せない・利益が出ない 負動産スパイラル
姫野 秀喜 (著)
2022年5月8日更新
これまでの世の中には「マンションの購入」というと、「結婚して所帯を持ってから」などの固定観念が広がっていました。しかし、時代の変化などを背景として、現代では独身であってもマンションを買うメリットが大きくなっています。
この記事では、独身かつ若いうちからマンションを購入するべき理由とともに、資産価値が落ちないマンションの選び方などについて解説します。
マンションを購入する単身者が増加するといった時代の変化や、意思決定のスピードなど単身者の強みを考慮すると、独身のうちにマンションを購入するメリットは大きいものです。
近年住宅業界を取り巻く社会環境は変化し続けており、単身者が非常に増えています。単身者が増えている理由は、高学歴化・晩婚化・長寿命化などです。
現代の日本では、少子化の影響から、大学の定員が進学希望者の数を上回る「大学全入時代」となっています。大卒者の平均初婚年齢は高卒の人よりも4歳遅いというデータもあり、高学歴化は晩婚化が進む原因の1つです。
そして、晩婚化の進行はマンションを購入する単身者の増加を促しています。さらに、離婚率の上昇や長寿命化によって独居高齢者が増えていることなども、単身者が増加している原因と考えられます。
日本全体で世帯当たりの人口が減っている背景から、マンションを購入する単身者は増加している状況です。
マンションと戸建とに関わらず、これまでの日本では「家を買うのは結婚してから」という考え方が広く浸透していました。結婚前にマンションを買ってしまうと、後に転勤や出産などで買い替えを迫られるのでは、中古マンションが本当に売れるのかなど疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。
しかし、資産性が高く値崩れしづらい家を買うのであれば、後で売却に苦労することはない上、賃貸に出すという選択肢も生まれるため、結婚まで家の購入を待つ必要はありません。
単身者は家族がいない分、同じ年収の既婚者と比較すると可処分所得が多くなります。また、単身者は家選びから実際に購入に至るまでの意思決定において、パートナーの意見を聞く必要がありません。自分自身の意思で即断即決できる点は、単身者がマンションを買う上で最も大きな強みとなります。
ただし、すべての単身者が家を買うべきというわけではなく、少なくとも年収が400万円以上はある状態で買うのが望ましいと言えます。年収が400万円を下回ると、銀行からの信用を得られないため、住宅ローンを組んで資産価値の高いマンションを購入するのは困難です。
「年収が低くても買えるマンション」を買ってしまうと、購入後に資産価値が低下して不良債権化してしまうことも十分に考えられます。マンションが売れなくなって不良債権化してしまうと、その後の人生を縛られてしまう結果にもなりかねません。
最長35年もの住宅ローンを組んでマンションを購入する上では、絶対に外せない条件が3つあります。3つの条件とは「売れる」「貸せる」「住める」です。3つの条件を満たすためには、どんなマンションを選べば良いのか解説します。
「売れる」という条件を満たす上では、面積が30㎡未満のマンションを購入するのはおすすめできません。30㎡未満のマンションは資産価値が落ちやすく、大半の場合は売却価格が購入価格よりも低くなります。
その一方で、立地条件など複数の条件を満たしていれば、40㎡以上または50㎡以上などのマンションは比較的値上がりしやすいものです。
30㎡を境に大きな違いがつくのは、住宅ローンの面積制限にあります。多くの金融機関では、住宅ローンの融資対象になるのは50㎡以上の物件のみです。また、ローンの利用可否は売却の可否にも大きく関係しています。
中古マンションであっても購入者は住宅ローンの利用を希望する人が大半であり、住宅ローンを利用できない物件は、検討対象から外れてしまうためです。また、住宅ローン控除が認められるのは50㎡以上の住宅のみという点も関係しています。
なお、住宅ローン控除の対象となるのは内法面積で50㎡以上なので、壁芯面積に換算すると54㎡以上となります。
2021年時点では、都心の新築マンションは供給数が少ない上に大きく値上がりしている状況です。しかし、「3つの条件」を満たすためには立地が重要なポイントとなるため、できれば都心のマンションを購入するのがおすすめと言えます。
価格を考慮すると中古マンションも検討対象となりますが、中古マンションを購入する場合には、築12年までの物件がおすすめです。
理由は住宅ローンの最長返済期間が関係しています。RC造のマンションは法定耐用年数が47年とされており、住宅ローンの最長返済期間も築47年までを目安に設定されます。このため、35年ローンを組むとしたら築12年が限界です。
また、万一マンションを売却することになった場合に、買手がより長期間の住宅ローンを組めるようにすることも考慮すると、やはり築12年以下の築浅物件がおすすめと言えます。
将来的に売却することも視野に入れてマンションを選ぶとなると、物件の「ブランド」も重視すべきポイントです。中古マンションの市場では特に、新築の市場よりもブランドを重要視する傾向があります。
三井不動産や三菱地所といった財閥系のデベロッパーは、単身者のニーズに応じて1LDKまたは2LDKを中心とした、単身者向けの高級物件を展開し始めています。こうしたハイブランドの物件はそうでない物件と比較して価格が落ちにくく、資産価値を維持しやすいのが特徴的です。
売却も視野に入れるとなると、南向きでできるだけ高層階の物件の方が良いのではと思う人もいるかもしれません。しかし、例えばタワーマンションを購入する場合、低層階の北向き物件は価格が安めに設定されている一方で、中古と新築とでそれほど価格差がつかない傾向を持っています。
タワーマンションには高価な住戸も多いため、手が届く価格帯の住戸には買手がつきやすいものです。
最後に、マンション購入を考える人の多くが疑問を持つポイントについて解説します。
マンションの購入をためらう人の中には、「自分が本当に銀行の審査を通過して住宅ローンを組めるのだろうか」と疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。
既に解説した通り、年収400万円以上のサラリーマンであれば特に問題ありません。なお、都市銀行などのローン審査では正社員か非正規雇用かといった点でも違いが出るものの、フラット35であれば非正規雇用であっても住宅ローンを利用可能です。
ただし、毎月の返済額が月収額面の25%以下となるよう気を付ける必要があります。過去の統計から、返済額が月収額面の25%以下であれば、返済遅延を起こす人はほとんどいないことがわかっているためです。
不動産投資を検討する人の中にも、「マンションを賃貸に出しても本当に入居者が入るのか不安」という人は少なくありません。
同様に、最初は住む目的でマンションを買ったとしても、転勤などで賃貸に出したときに入居者が入るか不安を感じる人は多いのではないでしょうか。
しかし、例えば東京23区内のマンションであれば空室率は10%もありません。家賃設定を間違えなければ、空室期間は2年間のうち1ヶ月程度で済む計算となります。
まとめ
近年の日本では様々な理由から世帯当たりの人口が減っており、単身者がマンションを購入するケースも増えています。また、「売れる」「貸せる」「住める」という3つのポイントにこだわってマンションを選べば、将来的に大きく値下がりするなどの失敗は起こりにくいものです。
そのほか、将来的な賃貸も視野に入れてマンションを購入するとなると、本当に住宅ローンを組めるのか、入居者が入るのか不安という人もいるでしょう。しかし、年収に関する条件と購入するマンションの立地を間違えなければ、ローンや空室で失敗する可能性は低いと言えます。
【関連リンク】その他の本はこちらからご確認ください。
沖 有人 (著)
2018年9月20日発行
人物
氏名
小川 進一
保有資格
・(公認)不動産コンサルティングマスター
・相続対策専門士
・不動産エバリュエーション専門士
・宅地建物取引士
・賃貸不動産経営管理士
・定期借地借家プランナー
プロフィール
不動産一筋35年!成約件数述べ5,000件以上。
自身も都内に複数所有している実践大家。