売れない・貸せない・利益が出ない 負動産スパイラル
姫野 秀喜 (著)
2022年6月20日更新
マイホームの購入は「夢」とも言われるほど大きな人生の転機です。しかし、マイホームとして新築住宅を購入したものの、3年から5年などの短期間で家を売りに出す人は少なくありません。
家を手放さざるを得ない理由は様々ですが、住宅ローン返済に行き詰まったというものが大半を占めると考えられます。マイホームの購入においてローン返済に関するリスクを軽減する方法は、賃貸併用住宅を購入することです。この記事では、賃貸併用住宅の購入に関する考え方などについて解説します。
本書で学べること
結婚した・子どもが生まれたなどの変化によって家の購入を考える人は少なくありません。しかし、家は「一生に一度の買物」と言われるほど高価なものであり、失敗したくないと思う人もいるのではないでしょうか。
購入する家として著者がおすすめするのは賃貸併用住宅です。賃貸併用住宅が持つメリットなどについて解説します。
家を買うというときに、多くの人が迷うポイントは戸建とマンションのどちらを買えばよいのかということです。特に都心では地価も高い上に土地も限られているため、最初からマンションにしか目を向けない人も少なくありません。
しかし、マンションはその大半が建物で形成されており、年数の経過によって価値が下がりやすい性質を持っています。その一方で、戸建住宅も年数の経過によって建物の価値がほぼゼロになるものの、首都圏であれば特に土地の価値が目減りすることはありません。
そのほか、マンションを購入すると修繕積立金・管理費というランニングコストが発生します。修繕積立金・管理費は両方とも築年数の経過によって上がっていく点に要注意です。戸建住宅に住む場合は強制的に徴収される費用はありません。
例えば、金利1%の35年ローンを利用して5,000万円の住宅を購入した場合に、マンションの居住費は以下の表のようになります。
費目 | 発生 | 金額 |
住宅ローンの返済総額 | 141,143円/月×35年 | 59,279,997円 |
修繕積立金 (5年ごとに5,000円増加の想定) |
15,000円/月×35年+値上がり分 | 12,600,000円 |
管理費 | 13,000円/月×35年 | 5,460,000円 |
駐車場代金 | 12,000円/月×35年 | 5,040,000円 |
給湯器の交換費用 (10年に1回発生する想定) |
200,000円/回×3回 | 600,000円 |
居住費合計 | 82,979,997円 |
一方で、戸建の場合は以下の表の通りです。
費目 | 発生 | 金額 |
住宅ローンの返済総額 | 141,143円/月×35年 | 59,279,997円 |
屋根修繕費 (15年に1回発生する想定) |
1,000,000円/回×2回 | 2,000,000円 |
外壁修繕費 (15年に1回発生する想定) |
300,000円/回×2回 | 600,000円 |
給湯器の交換費用 (10年に1回発生する想定) |
200,000円/回×3回 | 600,000円 |
居住費合計 | 62,479,997円 |
戸建住宅に住む場合は、屋根や外壁など建物に関連する箇所を自ら費用負担の上修繕する必要があります。マンションにおける管理費・修繕積立金の金額や値上げ時期は、管理組合次第で異なりますが、大半の場合は戸建住宅の方が安上がりに済むと言えるでしょう。
戸建住宅を購入する場合でも、住宅ローンの返済が大きな負担となる点に変わりはありません。そこでおすすめなのが賃貸併用住宅です。賃貸併用住宅とは、家主が住む家と貸し出せるアパートなどの住居とが一体になった形の住宅を指します。
家に住みながら賃貸することによって、家賃収入だけでローン返済を継続可能です。プラン次第では、ローン返済を経てもなお手残りが出ることもあります。
また、マンションとは違って土地も所有することになるので、経年劣化で建物の価値が目減りしても、土地は自分のものとして残ることが最大のメリットです。
ローン返済に関連するメリットが大きいにも関わらず、顧客に賃貸併用住宅を勧めている不動産会社はそれほど多くありません。1番の理由は、賃貸併用住宅を総合的にプロデュースできる不動産会社がほとんどないことです。
土地の情報を見ても賃貸併用住宅にマッチするかどうか、判断できる不動産会社は少ないと言えます。
賃貸併用住宅を運用する上で重要なポイントは、賃貸部分に空室を出さないことです。入居者を埋めるためには、物件の立地など様々なポイントがあります。入居者募集の他にも、物件完成後の行き届いた管理などが欠かせません。不動産賃貸に関して必要な業務を高い水準で遂行できる不動産会社は少ないのが実態です。
賃貸用の部屋を用意できるからという安易な理由で、広い土地があれば賃貸併用住宅を勧める不動産会社もあります。しかし、物件完成後の運用まで考えると、賃貸併用住宅を専門として手掛けている不動産会社を探すことが重要です。
普通のマンションや戸建て住宅と違って、賃貸併用住宅の広告などを目にすることは多くありません。どこでどんな物件を買えばよいのか、賃貸併用住宅の購入を検討する際のポイントについて解説します。
賃貸併用住宅を建てる上で重要なポイントは、不動産の賃貸ニーズが強い首都圏に建てることです。一方、首都圏で賃貸併用住宅を建てようとすると、多くの場合は土地と建物併せて7,000万円以上の費用がかかります。
必要費用を鑑みると、銀行融資の基準として世帯年収700万円以上が必要です。年収700万円というとかなり高いように感じられるかもしれません。しかし、世帯年収なので共働きで年収が700万円を超えていれば問題ないとも考えられます。
物件の立地として首都圏がおすすめな理由は、地方都市では今後人口減少が加速していくと予測されるためです。人口は住宅の賃貸需要に大きな影響を与えます。
一方、コロナが流行した2020年には東京で人口の転出超過が始まったと報道されました。表面的にとらえると、地方で人口が増えているのではと感じた人もいるかもしれません。しかし、東京から転出した人口が向かった先は地方都市ではなく東京の周辺都市でした。
首都圏の人口が多いという状況は変わっていないため、賃貸需要を鑑みると、賃貸併用住宅を建てるのであれば地方都市よりも首都圏の方がおすすめです。
首都圏で売られている土地には狭いものも多く、どうやって土地を選べば良いのかと感じる人もいるかもしれません。賃貸併用住宅を建てる土地として意外と狙い目なのが「旗竿地(はたざおち)」と呼ばれる土地です。
旗竿地とは旗に竿がついているような間口の狭い土地のことです。土地の間口は道路に接しているものの、細い通路を通って家の敷地があるような土地のことを旗竿地と言います。旗竿地は間口が狭いために通常は集合住宅の建築ができず、相場より2割~3割程度安く売られていることが少なくありません。
一般的な建売住宅を建てる場合は18~20坪程度の広さが適正です。一方、賃貸併用住宅を建てる場合は35坪程度の敷地が必要になります。35坪の旗竿地は、建売住宅用には広すぎてなかなか売れないのが実態です。
そのほか、一般的な戸建の場合は駐車場がついていることも少なくありません。しかし、敷地内に車庫を設けるためには幅2.5m以上の間口が必要です。賃貸併用住宅を建てる場合は必ずしも車庫を必要としないため、間口2mの旗竿地などが狙い目となります。
首都圏では地方と比べて自家用車の所有率があまり高くありません。賃貸住宅に住む人であれば、なおさら車を持っている確率も下がると言えます。車庫の有無が入居率にあまり関係しない点からも首都圏の旗竿地はおすすめです。
まとめ
賃貸併用住宅は、マンションよりも居住費が安い・家賃収入でローン返済が可能・世帯年収が700万円以上であればローンも使えるなどの点でおすすめです。賃貸併用住宅を専門とする不動産会社を探すほか、首都圏で物件を立てることなどが賃貸運用を成功させるためのポイントとなります。
【関連リンク】その他の本はこちらからご確認ください。
沖村 鋼郎 (著)
2020年1月23日発行
人物
氏名
小川 進一
保有資格
・(公認)不動産コンサルティングマスター
・相続対策専門士
・不動産エバリュエーション専門士
・宅地建物取引士
・賃貸不動産経営管理士
・定期借地借家プランナー
プロフィール
不動産一筋35年!成約件数述べ5,000件以上。
自身も都内に複数所有している実践大家。