売れない・貸せない・利益が出ない 負動産スパイラル
姫野 秀喜 (著)
2021年10月17日更新
昨今、年金対策や早期リタイアを念頭に不動産投資を検討する人が増えています。しかし、自己資金の少なさや騙されたくないという思いから、なかなか実際の投資に踏み出せない人も多いでしょう。
一方、物件の選び方を固めてローンを引き出すための金融機関対策を徹底していけば、自己資金が少なくても、確実に不動産投資の規模を拡大していけるでしょう。最も重要なポイントは、相場よりも安い物件を買うことです。
この記事では、不動産投資にあたって重要な考え方や物件選びのポイント、金融機関対策のポイントなどについて解説します。
株式投資やFXなど他の投資と比較すると、不動産投資は圧倒的に時間がかかりません。投資する前に物件を選ぶ・ローンを出してくれる金融機関を見つけるなどのためには時間がかかるものの、一度物件を購入すればその後はほとんど時間がかからないのです。
また、年収がそれほど高くない、自己資金がすくないといった場合にも、サラリーマンならばローンを利用して投資できます。
そして、不動産価格の値動きと家賃の上下動幅は一致しないのもポイントです。1990年代にバブルが弾けた時も、不動産価格は半額まで下がりましたが、家賃は半額にはなりませんでした。多少家賃が下がったとしても、利回りが半減したなどのことは起きていません。
不動産投資を始めるならば、若い時期から始めるほうがおすすめです。不動産投資はローンを利用する人が大半ですが、若いほうがローンの返済期間を長く設定して、毎月の返済額を抑制できるからです。
以下の方法が必ずしも該当するわけではありませんが、少ない自己資金から不動産投資を始めるのであれば、避けるべき不動産投資の方法は複数存在します。
新築ワンルームマンションは、販売されるまでにかかっているコストが多額に及んでいることから、圧倒的に割高です。そして、割高であるがゆえにローンを組んで投資すると、手元にほとんど現金が残りません。
シェアハウスは、金融機関から見ると住宅ではなく「寄宿舎」という扱いになります。寄宿舎に対して融資する金融機関は少なく、仮に金融機関が見つかったとしても高金利であるケースが大半です。
金利が高くなると、これも手元に現金が残りにくくなります。また、ローンを利用しづらいがために、売却しようとしてもなかなか買い手がつきません。流動性が低いこともシェアハウスのデメリットです。
例えば、不動産投資初心者の方は、できる限りリスクを抑制するために「東京23区内・駅近・築浅・状態良好」な物件に投資したいと考えるかもしれません。しかし、これら全ての条件を満たす物件は「誰の目から見ても手放したくないほどいい物件」です。そして誰もが手放したくない物件は、とても高い値段がついています。
不動産投資成功の鉄則は「安く買うこと」ですが、安く買うためには、何らかのリスクを受け入れなくてはなりません。いくらかのリスクを許容しつつも「正しい知識でリスクをカバーする」という考え方が必要です。
例えば、相場と照合すると8,000万円と評価されるような物件を、7,200万円で買えたとすれば、その時点で800万円の利益が確定しているとも考えられます。こうして余裕を持てれば、最終的に損失を出す可能性はかなり抑制できるでしょう。
値下げ幅を出すためには、カバーできるリスクを持つ物件に投資することが確実です。
また、短期間で投資規模を拡大するためには、売却益を狙える物件に投資することが必須となります。物件の売却によって現金を保有できれば、金融機関から融資を引き出す難易度が下がるでしょう。
例えば、2,000万円〜3,000万円程度の現金を保有できれば、大手地銀や信用金庫なども交渉のテーブルに乗ってくるようになります。
「不動産投資は物件選びの時点で勝負の9割が決まる」といわれるほど、物件選びは重要です。ここからは、物件選びの時に確認するべきポイントについてお伝えします。
物件の収益力を判断するにあたっては、指標となる3つの数字があります。表面利回り・実質利回り・キャッシュフローです。
表面利回りは「物件価格÷年間家賃収入」で計算します。実質利回りは年間家賃収入から賃貸管理費や修繕費用などの支出を差し引いた金額を用いて計算します。キャッシュフローは、実質利回りからローンの返済額や税金などを差し引いて計算します。
物件を判断するにあたって最も重要なのはキャッシュフローです。キャッシュフローが最終的に手元に残るお金なので、キャッシュフローがマイナスになると、毎月いくらかの持ち出しが発生してしまいます。
このため、「キャッシュフローを〜円出したい」という自分なりの目標金額を設定することが重要です。
ローンを利用して不動産投資をするならば、金融機関が下す担保評価は非常に重要なポイントになります。担保評価は土地の評価と建物の評価とに分かれており、両方を確認することが必要です。
土地の評価を確認するためには、まず「全国地価マップ」というwebサイトにアクセスして路線価を確認します。路線価がわかったら、「路線価×土地の面積」で概算の評価額を計算します。
建物の評価額は「新築価格×面積×経年劣化」で計算可能です。新築時の面積単価は構造によって決まっていて、例えばRC造の建物であれば、20万円/㎡です。経年劣化額については、例えばRC造の物件であれば、「(47-経過年数)÷47」という計算式で計算できます。
47という数字が出てくるのは、RC造建物の法定耐用年数が47年と決められているからです。例えば木造住居であれば、法定耐用年数は22年なので47を22に変えて計算します。構造ごとの法定耐用年数は、国税庁のwebサイトで確認可能です。
稼働力とは、いかに空室期間を短くして稼働させられるかということです。稼働力を判断するために見るべきポイントについて解説します。
検討している物件が立地しているエリアでは人口が増えているかどうかということです。なお、家は世帯ごとに住むため、人口数の増減よりも世帯数の増減が重要なポイントになります。
地域ごとの世帯数増減については、各自治体のwebサイトで調べられるので、確認しておきましょう。
例えば、単身者が多くワンルームマンションが人気のエリアで、ファミリー向けの2LDKなどに投資したら、入居者を探す難易度は高いでしょう。稼働率を上げるためには、人気の間取りと合致している物件に投資することが重要です。
ホームズが運営している「見える賃貸経営」というサイトを見ると、間取りごとの人気度を把握できます。
※参照:ホームズ https://toushi.homes.co.jp/owner/
金融機関からローンを引き出すため、特に重要なコツは2つあります。銀行の担当者対策を怠らないことと、自分の足で金融機関を開拓することです。
銀行がローンを出すかどうかを決めるポイントは、書類上での判断と人物的な判断とに分けられます。申込者の年収や勤務先といった属性と物件の収益性といった、申し込み書類に現れるポイントによって書類上の判断が下されます。
このため、提出書類をもれなく提出する・きれいで銀行担当者が見やすい書類を作るなど、好印象を演出する工夫をすることが重要です。また、銀行担当者と面談するときも、仕事の取引先にプレゼンをしに行くかのような態度で臨むとよいでしょう。
例えば年収があまり高くないサラリーマンに対して、好条件で不動産投資ローンを出してくれる金融機関はまずありません。普通に行っても融資してもらえないのならば、自分で金融機関を開拓することも必要になります。
まずはwebや電話帳などで金融機関をピックアップしてから、電話をかけ、融資担当者にヒアリングしてみましょう。電話口で不動産賃貸業を営んでいることと、ローンを出してくれる金融機関を探していると伝えれば、担当者につないでくれるはずです。
担当者には、ローン審査にあたって重視しているポイントや、ローンを出してもいいと考える物件の構造や築年数、金利などの条件をヒアリングします。担当者から積極的な姿勢を感じたら、アポイントを取って訪問してみましょう。訪問の際には、検討物件の資料を整理しておくことや、身だしなみを整えることなども重要です。
まとめ
不動産投資を短期間で拡大するために重要なポイントは、何よりも「相場よりも安く物件を買うこと」です。相場よりも安く買った物件を売却して手元の現金を増やし、金融機関の評価を上げることによって、投資規模を飛躍的に拡大できます。
相場よりも安く物件を買うためには、新築ワンルームマンションやシェアハウスなどへの投資は避けて、収益力・担保力・稼働力のある物件を見極めることが重要です。また、金融機関から好条件の融資を引き出すために、金融機関を自分の足で開拓し、担当者対策を怠らないようにしましょう。
【関連リンク】その他の本はこちらからご確認ください。
株式会社NSアセットマネジメント 藤山大二郎 (著)
2018年2月21日発行
人物
氏名
小川 進一
保有資格
・(公認)不動産コンサルティングマスター
・相続対策専門士
・不動産エバリュエーション専門士
・宅地建物取引士
・賃貸不動産経営管理士
・定期借地借家プランナー
プロフィール
不動産一筋35年!成約件数述べ5,000件以上。
自身も都内に複数所有している実践大家。