本に学ぶマンション投資

業界初!たった14問解けばわかる!不動産投資家育成ドリル

業界初!たった14問解けばわかる!不動産投資家育成ドリル

株式会社ニモプランニング 根本伸之 (著)

2018年1月25日発行

不動産投資で成功するために必要な知識は多岐に渡りますが、自分の資産をどのように増やしていくか、事前に計画を立てておくことは非常に重要です。本書「業界初!たった14問解けばわかる!不動産投資家育成ドリル」では、不動産投資におけるシミュレーションに加え、自分の未来の資産を予測する手法「自分バランスシート」がドリル形式で取り組めるようになっています。本エントリーでは、投資初心者でも未来の資産を見える化できる「自分バランスシート」について掘り下げます。

資産が見える化できる「自分バランスシート」を作るメリットとは

バランスシートとは、企業の健康状態を示す財務諸表の一つ「貸借対照表」のことで、簿記や経営学を学習する方が必ず基礎として学習するものです。簿記を習う場合は「借方」「貸方」など独特な用語などを理解する必要がありますが、不動産投資で活用する分には難しい知識は必要ありません。不動産投資でバランスシートを活用すると、以下のような様々なメリットがあります。

  • 未来の資産状況を予測できる
  • 次の物件を購入するタイミングがわかる
  • 融資を受けやすくなるタイミングがわかる
  • サラリーマンをリタイアできるタイミングが予測できる

バランスシート(BS)の考え方を理解する

バランスシートでは、ある時点の保有現金、その他資産、借入残高などを以下のように整理します。

バランスシートは総資産=総負債+純資産(自己資本)という式が成り立つ必要がありますが、慣れないと「なぜ負債と資産がイコールなのか?」という感覚に陥るかもしれません。しかし、純資産(自己資本)」=総資産-総負債と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。バランスシートでは【自分の資産を全て現金化し、全ての借金を返済したときに、残るお金を「純資産」として試算する】のです。

上記「一般的なバランスシートの図」の左側にある総資産に、収益を生む資産(不動産なら家賃収入によるキャッシュフロー)があれば、その資産が収益を生みます。なお固定資産である不動産のうち建物は、減価償却により毎年決まった価値が減っていきます。減価償却額よりもキャッシュフローの額が大きければ、総資産が毎年増えていく計算です。

右側の総負債では、毎月返済することで残高が減っていき、総資産の減り具合より総負債の減り具合が大きければ、右上の純資産(自己資本)が毎年増えていくことになります。

なお、冒頭で「自分バランスシート」を作るメリットとして、「融資が受けやすくなるタイミングがわかる」ことを挙げました。金融機関は融資する際、純資産の多さと自己資本比率(自己資本比率=純資産÷総資産)の高さを評価するので、これを把握しておくことが非常に大事です。

さてここで、金融資産を1,000万円持つ不動産投資家が収益不動産を購入した場合のバランスシートを見ていきます。前提は以下のとおりです。

現金 1,000万円
物件価格 仲介手数料込み1億円(土地5,000万円、建物5,000万円)
諸経費 400万円
構造 重量鉄骨造(法定耐用年数34年)
年間キャッシュフロー 200万円
年間貯蓄額 毎年100万円
頭金 400万円(その他諸経費を自己資金で負担)
借入れ 1億円
金利・期間 1.5%、30年、他の借金なし

上記「購入直後のバランスシート」では、自己資金400万円で1億円の不動産を購入したため、購入直後の現金は残額600万円です。不動産と合算した総資産額は1億600万円となり、総負債である借入額は1億円となります。総資産から純負債を引くと、純資産は600万円となります。自己資本比率は600万円÷1億600万円=5.7%となります。

次に、「10年後のバランスシート」を見てみます。毎年200万のキャッシュフロー(家賃収入)があり、毎年半分の100万円貯金をしたら、10年後は現金1,600万円が溜まります。不動産は建物部分の減価償却により、購入時1億円だったところ、帳簿上8,529万円に下がります。一方、1億円あったローン残高は7,057万円まで減っています。そして600万円だった純資産は3,071万円まで増え、自己資本比率は30%を超えました。

通常、中小企業は20~30%を超えると安定経営と評価されますし、金融機関の評価も同様です。金融機関によっては多少評価が辛いケースもありますが、15年同じ前提で物件を保有し続けると、純資産は4,445万円、自己資本比率は44.9%に達します。ここまで来るとほとんどの金融機関で、好条件の融資が受けられるようになります。

築古木造アパートの危険性が見えてくる

バランスシートが理解できると、たとえば築古木造物件を長期かつ高金利で購入することの危険性も見えてきます。たとえば法定耐用年数22年を超えた築古木造物件は、建物部分の減価償却を4年で行います。最初の4年は節税効果が大きく出ますが、その分簿価がゼロになり、ローン残高の減り具合に比べて総資産の不動産価値が大きく下がってしまいます。場合によると総負債が総資産を上回ってしまう恐れもあります。

上図の「築古木造 購入直後のバランスシート」は先ほどのバランスシートと全く同じ「総資産1億600万」からのスタートですが、その下の「築古木造 5年後のバランスシート」は建物の簿価がゼロになってしまうため、総資産における不動産価値が土地のみの5,000万円になり、総負債にあるローン残高は8,572万円残ります。たとえ現金が1,100万円残っていたとしていても、純資産はマイナス2,472万円となってしまいます。このように純資産がマイナスになることを債務超過といいます。上場企業なら上場廃止や倒産の状態であり、この時点で審査を受けても金融機関からは「返済見込みなし」と判断されてしまいます。

ハッピーリタイアを実現するタイミングをバランスシートで見る

本書では、「サラリーマンをリタイアして専業大家としてやっていけるか」の判断基準として、バランスシートを活用することを推奨しています。キャッシュフローは、たとえば災害や大規模修繕などにより突然支払が発生したときに大きく減る恐れがあり、それだけで判断するのは危険です。仮にキャッシュフローが悪化したとても、バランスシート上の純資産、自己資本比率が高ければ、追加借入も有利に行われる可能性があります。

本書で掲げられている「サラリーマンリタイア基準の例」を掲載します。

  1. キャッシュフロー:年間1,200万円以上
  2. 純資産:7,000万円~1億円以上
  3. 金融資産:1,000万円以上
  4. 自己資本比率:30~40%以上
  5. 所有する主な物件での耐用年数が20年以上あること
  6. 毎年のローン元本返済額が減価償却額より多いこと

仮にキャッシュフローを使いきったとしても、上記6つを満たしていれば、帳簿上純資産が毎年増えていく形になり、追加融資も通りやすいとしています。

バランスシートから物件購入タイミングを考える

純資産を増やすのはそこまで難しいわけではありません。たとえば土地の価値が5,000万円の収益不動産のローン返済を続けていれば、キャッシュフローを貯蓄していなくてもローン支払が終わったときには、純資産が5,000万円増えている計算になります。しかしそれでは20~30年という長い時間がかかります。投資家であれば、その期間中に物件を買い進め、資産を増やそうと考えるはずです。

もし良い物件情報を見つけたら、購入後どのようにバランスシートが変化していくかを予測しましょう。本書では、純資産が1,000~2,000万円程度に到達したら追加物件を購入できるタイミングだと考えます。純資産が不足するようであれば、所有物件の売却などにより、純資産と自己資本比率を高めるという方法もあります。収益物件を買い進めることで総資産が数億円規模になれば、時間と共に純資産は格段に増えていき、次のタイミングが来るまでの期間がさらに短くなっていきます。債務超過に陥らないよう留意することで、特に大きなリスクなく不動産投資を進めることができるのです。

まとめ

築古木造アパートの例がありましたが、一時債務超過のような状態に陥っても、時間を置けば持ち直せる可能性があります。ローンを払い続けることで、帳簿上の不動産価値とローン残高の差が縮まり、純資産が高くなるタイミングが来るからです。しかし、そこまでの資産を持たない方がこのような物件を保有すると、10年程度は追加融資を受けられず、規模の拡大が望めなくなります。このような投資スタイルを最初から望んでいたなら別ですが、後で方針を変えるのは困難です。

不動産投資では、毎年のキャッシュフローを見ることも重要ですが、事前に計画を立てることが重要です。バランスシートは総資産、純資産の変化を指標に、ある程度の予測が立てられますので、非常に重要な手法といえます。


【関連リンク】その他の本はこちらからご確認ください。



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2018年1月25日発行