マンション投資基礎知識

新築マンション投資はハイリスク?失敗につながりかねない注意点を解説

不動産投資に関連する情報がサラリーマンにも身近となった近年では、新築マンション投資を検討している人もいるかもしれません。また、新築マンションに対して安心感を持てるという人もいるのではないでしょうか。

しかし、新築マンション投資には、投資初心者にとっては特に注意すべきリスクが複数あります。また、不動産会社が必ずしもそれらのリスクを説明してくれるとは限りません。

この記事では、新築マンション投資に関するリスクや当社へ寄せられた失敗事例などについて解説します。

新築マンション投資の落とし穴

「マンションに投資するなら新築マンションの方が安心」と思う人もいるかもしれません。しかし、新築マンションには落とし穴とも言える注意点があります。

新築と呼べるのは最初だけ

日本では特に、不動産というと分譲・賃貸に関わらず新築物件の方が好まれる傾向にあります。「マンション投資と言っても入居者が入るか不安だけど、新築物件なら入居者も入るのではないか」と考える人は多いのではないでしょうか。

実際のところ、新築物件もしくは築浅物件が入居者に好まれるのは事実です。例えば女性などは特に、利便性が高く築浅でバス・トイレ別の物件などを好みます。

しかし、不動産を新築と呼べるのは物件が完成してから1年だけです。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」では、新築住宅は「人が住んだことがない住宅」または「建設工事完了日から起算して1年が経過した住宅」と定義されています。

※参照:住宅の品質確保の促進等に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411AC0000000081

最初の入居者が入居したあるいは、完成してから1年以上経過した住宅を新築住宅として広告することはできません。長期的な目線に立って考えれば、新築住宅に投資しても、空室期間の抑制に寄与する期間は短いのが実態です。

新築マンション投資で要注意のリスク

ここからは、新築マンションに投資するリスクについて解説します。実際に運用してみないと入居者が入るかわからない、大幅に値下がりする可能性が高いなどの点で、新築マンション投資にはリスクが多いものです。

周辺相場より高価格な物件が大半

新築マンションに投資する上で最も注意すべきポイントは、物件価格が周辺相場より高いということです。新築の投資用マンションには、売主の利益が100万円単位で転嫁されていることも多くなっています。

このため、物件を購入してから1年もしくは2年程度で価格が100万円以上下がったなどの事例もめずらしくありません。総務省が2018年に発表したレポートを見ても、築浅の住宅であるほど資産額の下落率は大きくなっているため、新築マンションは値下がりしやすいということに要注意です。

※引用:総務省
https://www.stat.go.jp/data/cpi/pdf/kenkyu1.pdf

継続して安定的な収入があるサラリーマンは、投資用マンションの購入にローンを利用できると営業している不動産会社は多いものです。しかし、例えば販売価格の全額をローンで賄った結果、マンションの価格が下落したために物件を売却してもローンを完済できないという失敗例は後を絶ちません。

また、新築マンションを販売している不動産会社は、自社が販売している物件と周辺相場との比較を提示しないことも多いものです。新築マンションの販売価格については、投資家が自ら価格の妥当性を検証することも必要になります。

高すぎる物件を購入しないためには、物件が立地する周辺のエリアでは築浅の物件がいくらで売られているのか、あらかじめ調査することも有効です。

キャッシュフローがほとんど出ない

新築マンションに投資すると、価格が高いためにローンの利用額も多くなります。借入額が多くなると毎月の返済額もかさむため、ローン返済が不動産投資の収益を圧迫することも多いものです。

結果的に、新築マンションに投資したものの、キャッシュフローがほとんど出ないということは少なくありません。キャッシュフローとは、毎月の家賃収入から管理費や修繕費等の諸経費を差し引いた手残りのことを指しています。

不動産投資で失敗しないためには、必ず事前にキャッシュフローを確認することが重要です。

継続的な節税効果は見込めない

投資用の新築マンションを販売する不動産会社の中には、「マンション投資は節税になる」と言って営業しているところも少なくありません。実際に、不動産投資では減価償却費という実際の支払を伴わない経費を支出することで、節税も可能になります。

しかし、不動産投資において大きな減価償却費を計上できるのは、築古の木造物件だけです。新築マンションは減価償却費が最も小さくなる物件なので、節税効果はほとんど見込めません。

物件を購入して1年目の確定申告では、物件購入にかかった諸経費を税務上の経費として計上できます。このため、1年目は節税効果も大きくなることが多いものです。しかし、2年目からは計上できる経費が大幅に減ってしまうため、マンション投資による節税効果はほとんど無くなります。

なお、不動産投資による節税効果を目に見えて感じられるのは、最低でも年収900万円以上の人です。年収が900万円に満たない人の場合は、節税効果よりも継続的な家賃収入に主眼を置いて不動産投資を進めるのが安全と言えます。

根拠に基づく収支シミュレーションをできない

新築マンションは中古マンションと違って、入居者を入れるのが初めてとなるため、これまでの運用履歴を確認できません。

中古マンションであれば、レントロールという家賃や諸経費の履歴を確認できるため、物件を購入する前の時点で容易に収支をシミュレーションできます。レントロールを確認すれば、直近の空室期間についても確認できるため、中古マンションに投資する場合は、空室リスクの高い物件を避けることも可能です。

実際に入居者を募集してみないと、入居者が入るかわからないという点は新築マンション特有のリスクと言えます。

新築マンション投資に関する失敗談

ここからは、当社が開設している不動産投資のかけこみ寺へ寄せられた、新築マンション投資に関する実際の失敗談をご紹介します。

毎月2,000円の利益が出るはずが今では1万5,000円の赤字に

Aさんは8年前に約2,300万円の新築ワンルームマンションを購入しました。友人に紹介された不動産会社へ話を聞きに行ったのが、物件を購入したきっかけです。

物件購入時の収支シミュレーションでは、毎月2,000円程度のプラスが出るという話でした。しかし、物件を購入してから8年が経過した時点では、マンションの管理費や修繕積立金が値上げされる一方で家賃は低下し続けており、毎月1万5,000円の赤字収支となっています。

入居者が入れ替わった時には壁紙の張替えや清掃などの費用がかかりますが、毎月赤字が続いている中で、どこから費用を捻出するべきか、Aさんは頭を悩ませています。

※実際の相談内容はコチラ
/shippai/case_1268.html

家賃保証を解約されて毎月4万円の赤字が発生

Bさんは、3年前に家賃保証付きの新築ワンルームマンションを2,500万円で購入しました。しかし、運用を開始してから2年後に突然家賃保証会社から保証契約の解約を言い渡されたのです。

マンションを売却することも考えましたが、同じマンションの上層階が1,800万円で売り出されていることを知り、売却してもローンの残債を返しきれないため、あきらめて入居者を募集することにしました。

何とか入居者が見つかったものの、家賃は当初の保証家賃よりも2万円低く、毎月4万円の赤字が発生している状況です。

※実際の相談内容はコチラ
/shippai/case_1015.html

物件購入前の調査・シミュレーションが重要

AさんとBさんに共通している失敗の原因は、年数が経過すると家賃が下がっていく点を考慮していなかったことです。AさんもBさんも、家賃が下がって経費が増えることを考慮していなかったため、運用を開始したのちに時間が経ってから赤字に悩まされています。

また、Bさんについては物件購入後2年目の時点で物件の価値が700万円下がっており、物件を売却してもローンを返済できない状況に陥っています。これは、物件を購入する前に価格の妥当性を確認しなかったために起きた失敗です。

マンション投資で物件を選ぶ際には、あらかじめ物件価格と家賃とが下がっていく一方、維持管理にかかる諸経費は上がっていく前提で、収支と売却の時期を想定する必要があります。

まとめ

新築マンション投資は、不動産投資の中でも特に不透明性が高い投資手法です。過去の履歴から収支をシミュレーションできない、実際に運用してみないと入居者が入るかわからないなどの点で、物件を購入する前の時点で講じられる対策が少ないと言えます。

また、物件を購入してから短期間で大幅に値下がりしたなどの失敗例は多く、価格の妥当性を事前に検証することは非常に重要なポイントです。

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監修者プロフィール

  • 人物

    小川 進一

  • 氏名

    小川 進一

  • 保有資格

    • ・(公認)不動産コンサルティングマスター

    • ・相続対策専門士

    • ・不動産エバリュエーション専門士

    • ・宅地建物取引士

    • ・賃貸不動産経営管理士

    • ・定期借地借家プランナー

  • プロフィール

    不動産一筋35年!成約件数述べ5,000件以上。
    自身も都内に複数所有している実践大家。