マンション投資基礎知識

不動産投資の減価償却とは?計算方法やポイントと条件を徹底解説

不動産投資を行う上で、欠かせない知識のひとつが減価償却です。減価償却を活用することで節税効果を得られます。

しかし、減価償却という言葉を知っているだけで、意味や節税効果まで理解している人は少ないでしょう。

この記事では不動産投資における減価償却とは何か?という基礎知識から、減価償却費の計算方法まで幅広く解説していきます。これから不動産投資を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

不動産投資における減価償却とは

まずは、不動産投資での減価償却費とは何か?という基礎知識を解説していきます。

減価償却を理解しておくだけで、不動産投資の節税にも活用可能です。また、減価償却の説明に加えて、減価償却が必要なケースや減価償却費の項目などを説明します。

減価償却とは

減価償却とは、購入した資産(固定資産)の費用を、まとめて計上するのではなく、複数の年度に分けて計上する会計上の仕組みです。

簡単な例として、資産価値のあるものを1,000万円で購入した場合、費用をまとめて計上すると大きな赤字になる可能性があります。しかし、減価償却を活用することで、毎年100万円ずつや200万円ずつなど、定められたルールに合わせて少しずつ計上可能です。

一般的に、不動産や車などの高額な固定資産は、減価償却を活用することが多くなっています。

減価償却費の項目とその法定耐用年数

続いて、不動産に関する、減価償却費の対象となる項目とそれぞれの法定耐用年数を解説します。項目とは、減価償却の対象となる資産のことで、法定耐用年数は減価償却として計上できる年数を表しています。

不動産投資の場合、減価償却の対象となるものは、建物と付随する設備のみであり、土地は対象にならないため注意しましょう。理由として、会計上で土地は劣化しないと定義されているからです。

減価償却費の項目とその法定耐用年数は、下記の表の通りです。

減価償却費の項目とその法定耐用年数

(参考:国税庁|減価償却費|耐用年数

上記の表を見ると、同じ鉄骨造でも厚さが数mm変わるだけで、法定耐用年数が最長15年も変わることがわかります。また設備の素材によっても、法定耐用年数が定められています。

不動産投資における減価償却のメリット

続いて、不動産投資における減価償却のメリットを解説します。どのようなメリットがあるのか、具体的に説明していきます。

支出の少ない年度にも経費を計上できる

不動産投資の際に、減価償却を行うメリットは、支出の少ない次年度以降も経費として計上できる点です。購入の翌年以降、購入した不動産の建物価格について、実際には支出がなくても、耐用年数に応じて、複数年に渡り、経費として計上が認められます。それによって利益を圧縮し、節税効果を得ることが可能です。

不動産投資家の一部では減価償却費「魔法の経費」と言われることもあるようですが、当然メリットばかりではありません。減価償却の注意点は、後半で解説していますのでぜひご確認ください。

給与所得と不動産所得の損益の相殺が可能

続いては、給与所得と不動産所得を相殺できるというメリットです。これは、副業で不動産投資をしているサラリーマン大家が対象になります。

給与所得と不動産投資で生じた損益は、利益と損失を相殺できます。そのため、本来給与所得によって納めなければいけない税金を、不動産投資における減価償却費で抑えることが可能です。

サラリーマンとして働きながら不動産投資を検討している方にとっては、重要なメリットになるでしょう。

減価償却費の計算方法

減価償却費の求め方には、主に以下2種類の方法があります。

・定額法:毎年の減価償却費を固定にする方法

・定率法:購入後の年数が経過するごとに償却額を小さくする方法

ただし、現在は定率法による減価償却は廃止されており、平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は、旧定額法または定額法のみとなり、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備および構築物の償却方法は定額法となります。

定額法での計算方法

定額法での減価償却は、耐用年数の間は毎年固定の金額を経費として計上する計算方法です。

定額法の計算式は次の通りです。

・減価償却費=取得価格×定額法償却率

 

取得価格は、不動産投資の際に生じた建物の購入金額です。定額法償却率の値は耐用年数によって異なり、耐用年数が短いほど減価償却による節税効果を得やすくなっています。

定率法での計算方法

定率法は、購入後の年数が経過するごとに減価償却費を小さくして計上していく計算方法です。前述の通り、現在は建物および建物付属設備・構築物については定率法による減価償却は廃止されていますが、簡単にご説明します。

ただし不動産投資の経費が多額になってしまいがちな初年度には、定額法で求めた減価償却費よりも多くの金額を経費として提出できます。

定率法の計算式は次の通りです。

・減価償却費=(取得価格-前年度までの減価償却累計額)×定率法償却率

前年度までの減価償却累計額は、前年度までに減価償却を行った金額の合計のことをいいます。定率法償却率の値は、定額法償却率と同様に耐用年数によって値が異なるため注意が必要です。

減価償却のポイントと注意点

不動産投資における減価償却で大切なポイントや注意点を解説していきます。減価償却の活用にはさまざまなメリットがありますが、購入する物件によっては減価償却でメリットを得られない場合があります。それぞれ詳しくみていきましょう。

赤字になっても実際の手残りや銀行融資に影響しない

減価償却前の赤字は銀行融資に影響しますが、減価償却後の赤字は銀行融資に影響することはありません。減価償却費が大きくなると、不動産からの家賃収入から利益が出ているはずなのに確定申告では赤字になってしまう場合があります。

そのため、銀行からの融資審査に影響を受けるのでは?と不安を感じる方もいます。しかし、一般的に銀行の審査では減価償却ではなく利益や現金がどの程度残っているのかを見られるため影響は少ないと言えるでしょう。減価償却の活用を悩んでいる理由が銀行の融資であるなら、安心して活用して良いでしょう。

譲渡税が増えるケースもある

減価償却によって節税効果が得られることがほとんどですが、売却する時期を間違えてしまうと譲渡税の金額が増えてしまう場合もあるため注意が必要です。

例えば、物件を取得してから6年経過する前に物件を売却した場合は、短期譲渡となるため税率が上がってしまいます。また、譲渡税の計算に使われる建物価格は、減価償却によって減少した後の価値によって計算されます。

不動産の売却を検討している方は、短期譲渡の税率に加えて、建物の残りの価値との差額を計算しておくことが重要なポイントです。

減価償却費の効果を得にくい物件もある

購入する不動産によっては、減価償却の効果を得にくい場合もあります。なぜなら、不動産の種類によって減価償却できる耐用年数に大きな違いがあるからです。
とくに、減価償却費による節税効果が得づらい物件は、新築区分マンションやアパートなどで、耐用年数が長いため節税効果を得にくくなっています。

新築の中でも、鉄骨などの法定耐用年数が長い構造の物件では減価償却費を取りづらいです。減価償却費による節税効果を活用したい方は、耐用年数が長すぎない物件を探すことをおすすめします。
 

不動産投資における減価償却で節税効果を得やすい条件

不動産投資における減価償却費は、不動産の種類によって異なることをお伝えしてきました。ここからは、いざ不動産投資をする際に減価償却で大きな節税効果を得やすい条件を4つご紹介します。

  1. 法定耐用年数が短い
  2. 築年数が古い
  3. 不動産収入が大きい
  4. 長期保有が目的

それぞれ詳しく確認していきましょう。

条件1:法定耐用年数が短い

減価償却を行う上で、法定耐用年数はとくに重要なポイントです。

減価償却費を経費として提出できる年数は耐用年数によって変化するため、耐用年数が長い方がいいのでは?と思う方もいるでしょう。しかし、前述の注意点でもご紹介したように、耐用年数が長いと毎年の減価償却費は少なくなってしまうため、耐用年数が短い方が減価償却の効果は得やすいということになります。また、中古物件ですでに耐用年数を超過している場合、その物件を取得して最短4年(木造の場合)で全額償却できます。建物の構造から比較すると、減価償却の効果が得やすいのは、法定耐用年数が22年と短い木造の物件うち、さらに法定耐用年数を経過しているものといえるでしょう。
 

条件2:築年数が古い

続いて、築年数が古いという条件です。

法定耐用年数は、減価償却費に大きく関わってくるため、頑丈な建物であるほど法定耐用年数も長くなる傾向があります。

 

しかし「建物の構造を頑丈な鉄骨にしたい上に、減価償却により節税効果を得たい」という方もいるでしょう。

その場合は、築年数が古い頑丈な構造の物件を探すことをおすすめします。

 

中古物件の場合、次のような計算式で算出する必要があります。

【中古物件の耐用年数計算式】

築年数が法定耐用年数の一部を経過している場合

 

(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)

 

築年数が法定耐用年数全てを経過している場合

法定耐用年数×20%

(参考:国税庁|​​中古資産の耐用年数

上記の計算式に当てはめて耐用年数を確認しておきましょう。

条件3:不動産収入が大きい

減価償却を行うケースには、物件を売却した場合も含まれます。物件を売却するときは、所得税・住民税率と譲渡税率の差を税金に反映させることが必要です。

所得税や住民税率が大きいほど、譲渡税率との差は縮まり税金を減額できることにもつながります。そのため不動産収入が大きければ、所得税や住民税率も上がるため最終的に得をする仕組みです。

条件4:長期保有が目的

減価償却の効果を最大限活用するための最後の条件は、長期的に物件を所有することです。具体的には、所有期間6年未満での売却を検討している方は減価償却のメリットを活かしきれない可能性があります。

前述した注意点でも解説したように、長期譲渡と短期譲渡では譲渡税率が異なります。

【譲渡所得の計算方法】

短期譲渡所得の税率

30%(所得税)+0.63%(復興特別所得税)+9%(住民税)=39.63%

長期譲渡所得の税率

15%(所得税)+0.315%(復興特別所得税)+5%(住民税)=20.315%

 

上記のように、短期譲渡の場合は税率が高額になるため注意が必要です。

まとめ

不動産投資における減価償却費は、高額な不動産購入費用を毎年少しずつ計上できる仕組みです。ご自身の状況に合わせて減価償却を活用すると、税金をコントロールしやすくなります。

しかし、支払う税金が無くなったり、魔法のようにお得になったりするものではないため注意が必要です。

まずは、購入する物件によって減価償却の条件がどのように変化するのかを理解しましょう。条件を理解した上で、投資計画に合う不動産購入を検討することをおすすめします。

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監修者プロフィール

  • 人物

    小川 進一

  • 氏名

    小川 進一

  • 保有資格

    • ・(公認)不動産コンサルティングマスター

    • ・相続対策専門士

    • ・不動産エバリュエーション専門士

    • ・宅地建物取引士

    • ・賃貸不動産経営管理士

    • ・定期借地借家プランナー

  • プロフィール

    不動産一筋35年!成約件数述べ5,000件以上。
    自身も都内に複数所有している実践大家。