本に学ぶマンション投資

失敗のしようがない 「新築」投資の教科書

失敗のしようがない 「新築」投資の教科書

脱公務員大家 (著)

2018年1月23日発行

昨今、不動産投資家の間では「土地から買う新築一棟不動産投資」がスタンダードになりつつあります。本書には、この投資法こそ初心者でも勝てると考えた著者が、手探りで見つけていったプロセスがまとめられています。本エントリーでは、この投資法の魅力、その手法について紹介します。

土地から買う新築投資の特徴

土地から新築投資法とは、投資家が土地を購入し、自分でプランニングした一棟アパート/マンションを新築で建てて運営することを言います。

この投資法の最も大きな特徴は、融資が受けやすいことです。一般的に、融資期間は建物の耐用年数から決まります。中古物件であれば、融資期間は耐用年数から経過年数を引いて算出するため、残存期間が短ければ融資期間も短くなります。融資期間が短いと年間の返済額が大きくなり、利回りが高くなければキャッシュフローが悪化してしまいます。収支が回らない物件には金融機関も厳しくなります。
その点、新築物件であれば経過年数はゼロです。新築RC造なら融資期間は長くて35年(耐用年数は47年)、新築木造なら長くて30年とする金融機関が増えています(耐用年数は22年)。中古と比べて融資期間が長くなり、利回りが低い物件でもキャッシュフローもプラスが出やすくなって、融資が出やすくなります。

次に、修繕・設備費用がかかりにくいことです。新築なら向こう10年は修繕費、設備のリプレイス費用はほぼかからないうえ、たとえ躯体に重大な問題があったとしても、10年間は建物保証がつくため費用をかけずに修繕が可能です。また中古なら入居者をつけやすくするため最新の設備を取り入れることがありますが、新築なら向こう5年間は設備を新しくする必要はありません。

そして最後に、賃貸経営の運営がしやすいことです。新築は設備がキレイで新しいことから、プレミアムの価値があり家賃が相場よりも高めに取れます。客付けが容易なため入居者の質も高くなり、運営しやすくなるという点が最大の魅力と言えます。

また、建物のプランニング次第で競争力のある物件を実現できることも特徴です。たとえば調理師学校の近くに、調理師学校の生徒に需要がある「オートロック」「広めのキッチン」などの設備を備えた物件を企画・建築すれば、特徴がない物件より多少家賃が高くても入居者が申し込む可能性が高くなります。

一方、新築は土地の購入後、建物の完成までに時間がかかります。融資付けから完成まで最低でも半年、大規模RC造だと2年程度かかることもあります。その間賃料は取れず、頭金も動かせません。土地の融資は期中金利負担も発生します。

賢い融資の引き方

物件を見つけてから金融機関に融資を打診する方は多いと思いますが、本書は逆に、金融機関毎に融資条件を確かめてから、合う物件を探すことを推奨しています。物件を見つけてから金融機関に打診するのではスピード勝負になると弱みになりますし、さらに融資が引けなかったときに無駄になるからです。建売パッケージ商品や区分マンションとは違い、土地から新築では、まずは土地への融資、その次に建物への融資をしてもらう必要があるので、このような融資が可能か、金融機関に事前に確かめないと、土地探しも無駄になる恐れがあります。

金融機関に融資条件の確認する方法は以下のとおりです。
金融機関にアポをとり、訪問して融資条件を聞きましょう。金融機関は付き合いのある銀行、自宅に近い銀行からあたります。「普段は勤め人で、土地を購入し収益物件を建てるプランを検討しており、相談にのって欲しい」と聞き、断られたら候補からはずします。アポが取れたら、源泉徴収票、確定申告3期分、借入金や返済予定を表にしたものなど資料を持参して、不動産経営を検討していることや希望融資額を伝えます。突発的な出費に備え、手元にキャッシュを残す目的でフルローンを第一希望としましょう。

もし融資を断られたら、次につなげるために原因分析を行いましょう。金融資産や年収に問題があった場合、家族の協力を得る以外改善しづらいので、その金融機関には時間を置いて再アタックするか、別の金融機関にあたります。もし家族の協力が得られるなら、金融資産を大きく見せることは可能です。夫婦の年収を合算する、親兄弟が働いていたら合同で法人を立ち上げ全員の年収を合算するなど。ほかにも、株・債権、生命保険の解約金、見込んでいる退職金や学資保険の積み立て、相続財産等も付与できます。
もし物件評価や規模などが問題だったら詳しい原因を聞きましょう。土地の評価がもう少し高ければ、収益性がもう少し高ければ、物件規模がもう少し小さければなどの理由がわかれば、その条件に合わせた物件を持ち込めばよいのです。

このようなやり取りを複数金融機関に対して行うと、各金融機関の融資条件がわかります。これにより、条件に合った物件が出てきたらすぐ行動に移すことができます。

手ごろな土地の見つけ方

割安物件を取得するための土地から新築投資法ですが、実現には相場より安く土地を仕入れることが最も重要です。

狙うべきエリア

賃貸需要がある割安なエリアで、相場より割安な土地が狙い目です。以下条件に合致するエリアには注目です。

  • 首都圏の大きなターミナル駅から乗換えが少なく(電車で40分以内)、ある程度賃貸需要が見込めるエリア。
  • 地方で中心部から少し離れており、車での利便性の高い、ある程度賃貸需要が見込めるエリア。

相場を知る

割安な土地を探すには相場を知ることが大事です。狙うべきエリアを決めたら、そのエリアの土地情報を毎日見ます。一坪当たり土地価格(坪単価)を頭に入れ、割安物件がでたらすぐ対応できるようにします。

情報の入手方法

手軽に見られるポータルサイトにも割安な物件が掲載されることがあります。収益物件なら楽待、健美家、不動産連合隊。土地情報が多いのはSUUMO、アットホームです。中でもアットホームは、物件情報をLINEでいち早く通知するサービスがあり便利です。
土地情報なら、大手不動産会社に自宅売却希望者の情報が集まるため、三井不動産リアルティ、住友不動産販売、東急リバブルなどのサイトをチェックしましょう。これらの会社は売主と距離が近いため、価格交渉の可能性もあります。
コアな情報は地場の不動産会社に集まる傾向にあります。Webサイトやメルマガ等で情報発信しているケースもあるのでくまなくチェックしましょう。

すぐに対応する

割安物件を見つけたときは、すぐ電話で問い合わせして、問題なければ購入意思を示す買付証明書を1分1秒でも早く送ります。買付証明書と印鑑は常に持ち歩きましょう。

建築会社の見つけ方

インターネットで建築会社を探すのは簡単ですが、広告費をかけて集客している会社が多いので割高になるかもしれません。ネット掲載に積極的でない地元密着の建設会社を探すには、タウンページから探すという手があります。今はアイタウンページで検索できるようになり便利です。既に土地から新築の不動産投資に取り組む投資家に紹介してもらうのも有力な手法です。

建築会社も利益を得たいというのが本音です。安くして欲しいと言われたら、設備グレードを下げたり、施工に手を抜いたりして、手残りを増やそうとするはずです。割安で質が高い建物を建てたいなら、相手にメリットを提示する事が大事です。たとえば建築会社を探している友人を紹介する、工期を長めにするなど、相手の立場に立って交渉することが大事です。

複数の建築会社をピックアップしたら、以下をヒアリングしましょう。

  1. アパート・マンションの建築実績、得意なジャンルは?
    建築会社や工務店にも得意分野があります。実需住宅専門の工務店は対象外ですし、木造アパート、鉄骨造、デザイン性の高い物件が得意、といった違いもあります。
     
  2. 建築費用はいくらか?
    コストパフォーマンスを計るには、坪単価や一部屋あたりの単価を聞く必要があります。坪単価といってもグレードや前提条件などによって変わるので、見積もり条件を一定にして、各建設会社に価格を聞きましょう。たとえば「道路付きの土地で、アパート仕様の最低限のグレードの設備、木造2階建て、25㎡1K8戸の建物の建設をお願いした場合、いくらでやってもらえるのか」と聞きます。これなら標準的な1Kの一部屋あたりの単価がわかりますし(建築費÷8戸)、延床面積の坪単価(建築費÷200㎡×3.3)も算出できます。

参考までに、本書にある大都市圏での妥当な坪単価を紹介します。

<躯体ごとの坪単価の目安>

木造 40~60万
鉄骨造 70~90万
RC造 90~110万

※地方都市では大都市圏より1~3割低く想定

最終的に複数建築会社に見積もりを取って、安く見積もりを提示した建築会社の価格を、品質の高い会社にメリットを提示しながら持ちかけ、安くできないかを打診するのがよいでしょう。

まとめ

土地から新築不動産投資は、中間マージンを省くことで市場より利回り1~2%程度高い物件を仕入れられる手法です。さらに利益最大化を狙うなら、築4~6年程度の築浅の状態で売却することもおすすめです。利回りが高く競争力を保った状態で売りに出すことで、売却益を狙えます。新築でも出口を考えてスタートすることが、失敗しない不動産投資の秘訣といえます。


【関連リンク】▼その他の本はこちらからご確認ください。

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